被災地の子ども達のために

能島 裕介

特定非営利活動法人ブレーンヒューマニティー理事長
CAPセンター・JAPAN 監事

被災地の子ども達のために

いまからちょうど1年前のあの日、私は東京にいました。あるイベントに出席するため、3月10日に東京に入り、11日の夜には兵庫・西宮に戻る予定でした。私は17年前にも阪神・淡路大震災で被災しましたが、その時よりも格段にゆっくりとした揺れでした。その日、私は関西に戻ることもできず、東京の友人宅で一夜を過ごすことになりました。地震直後から私のメールやツイッターには全国のNPO関係者などから連絡がひっきりなしに入ってきました。そして、その日のうちに全国のNPOの連合体の原形のようなものが生まれてきました。その連合体は、いま「被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト(つなプロ)」として、被災地での支援活動を行っています。
その一方で、子どもや教育に関連のあるNPO同士でも連帯して被災地の子ども達を支えていこうという動きがでてきました。私たちはその動きに呼応する形で、子ども達に関わる全国のNPOや公益財団法人日本財団とともに「ハタチ基金」を立ち上げました。この基金は今回の震災で被災した子ども達が20歳になるまで支え続けることをコンセプトに共同で資金調達を行いながら、それぞれのNPOのノウハウや経験を活かして、被災した子ども達の支援を行おうとするものです。
私が代表を務めるブレーンヒューマニティーでは、一昨年から関西地域で展開していた貧困世帯向けの学校外教育バウチャー事業をハタチ基金の活動として被災地で展開することに決定し、6月に「一般社団法人チャンス・フォー・チルドレン」という別法人を立ち上げるとともに仙台市内に事務局を設置しました。この学校外教育バウチャーという仕組みは、経済的な事情によって塾や予備校、習い事、スポーツ活動、文化活動、自然体験活動などの学校外教育を十分に受けることができない世帯の子ども達に対して、現金の代わりに使用することができるクーポン券(バウチャー)を提供するというものです。今回の被災地では地震の直接的、間接的影響によって保護者を失ったり、保護者が失業したりした子ども達が数多くいました。そのような子ども達に25万円相当のクーポンを提供し、学校外での学びや遊びの機会を保障することが私たちのねらいでした。
今回のような大規模災害においてはどうしても保護者は生活再建などに追われ、子ども達のケアを十分に行うことができない状況が生じます。そのような状況のなか、学校外で子ども達を支える場を作ることは子ども達だけでなく、その保護者の負担を軽減させることにもつながります。昨今、被災地では困難な生活環境や厳しい生活再建へのストレスの中で子ども達に対する虐待などが発生しているとの話も耳にします。子ども達だけでなく、保護者もまた非常に厳しい状況におかれている被災地のなかで、子どもへの暴力防止の活動は極めて重要な意味を持つと考えています。
そして、その取り組みをいま行うことこそが、将来的な被災地の復興に大きな意味を持つと信じています。

■ハタチ基金 http://www.hatachikikin.com/
■一般社団法人Chance for Children http://cfc.or.jp
(CAP NEWS21号<2012年3月発行>より転載)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事