親権法改正について

石田 文三
大阪弁護士会弁護士
CAPセンター・JAPAN 元監事

親権法改正について

昨年、民法の親権の一部が改正され、平成24年4月から施行されています。そこで改正の要点を簡単に紹介し、わたしの意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、親権とは親の子どもに対する権利であり義務なのですが、権利であることばかりが強調され、義務であることが忘れられがちです。今回の改正では、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育する権利を有し、義務を負う。」(新820条、下線部が改正部分、以下同様。)と改め、義務であることを強調しています。
懲戒権の規定も改正されました。「親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。」(新822条)とされ、子の利益のために必要な懲戒のみが認められます。
これまで懲戒には「体罰」を含むと解釈されてきましたが、今回の改正によって「懲戒」に体罰を含まないと解釈すべきだと思います。体罰も許されるとなると、許される体罰とそうでない体罰の限界があいまいとなり、しつけのためと称して、酷い暴力を振るう親が跡を絶たないからです。また最近の研究で、(明治時代の)日本で体罰が横行していたから、それを制限するために懲戒権の規定が設けられたことが明らかにされており、このような経過からも、懲戒に体罰は含まれないとすべきです。
親権喪失宣告の規定も変わり、子ども本人も申立できることになりました。これは子どもに大きな負担を与えるとの反対論もありましたが、子どもに自主性を認めることになるので、わたしは賛成です。また、新たに親権停止という制度が設けられ、親権の行使が困難であったり不適当であるときに、最長2年間、親権を停止できます。
親権の停止というと、大変なことだと受け取られると思います。親権がなくなると子どもに会うこともできなくなる(あるいは子どもに会わせる必要がない)と言う方もいますが、これは誤解です。このことは、両親が離婚したときのことを考えていただければ理解いただけると思います。離婚すると両親の一方が親権者となり、他方の親権はなくなりますが、それでも子どもとの面会交流が保障されています。それと同様に、親権が停止されても、親子でなくなるものではなく、子どもとの面会も保障されるのです。
親権停止は、親が子どもに必要な治療を認めないときに利用できます。また親が子どもを虐待していて、子どもを施設に保護すべきであるのに、親がこれに反対するときにも、親権停止を行うべきです。もっとも親権停止までしなくても、家庭裁判所の承認を得れば施設に入所させることができるので、家裁の承認を得る方法によるべきだとの意見もあります。しかし子どもが施設で安定して生活できるようにするためには、親権を停止する方がベターだと思います。もちろん既に述べたように、親権が停止されても、親子の交流を図り、できるだけ早く子どもが家庭に戻れるように支援すべきは当然です。そして親も、子どもが家庭に戻れるように、自分の育て方を考え直して欲しい、その期間が最長2年間ですよ、というのが法律の趣旨だと思うのです。
(CAP NEWS22号<2012年10月発行>より転載)

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